(未検討)
山崎氏は、日経ビジネス文庫の著作の中で
「行動ファイナンス理論の登場により、旧来の金融工学の理論的な前提が疑われるようになった」
「金融工学は理論内部の理論的整合性は調っているが、前提が間違っているので誤り」といった趣旨のことを述べていたと思う。
以下ではこの主張に対して、今後の私の対応を考えてみたい。もしこの主張が正しければ、ランダムォーク派やインデックス派、あげくにはバンガードまで総崩れしてしまう可能性があるからである。
ただ山崎氏は、これ以上の議論を展開していないので、彼が金融工学の「理論的前提」が何であり、行動ファイナンスの登場により、そのど゙の部分の無効が明らかになったのかということに関しては全く述べてはいない。
しかし、ブログ等を拝見するに山崎氏はマクロ経済学に関しては相当程度に造詣が深く、主張も的確である。もちろん市場の効率性をめぐる議論に関しても十分な知見をお持ちであろう。そのような御人の主張であればこそ、真摯に受けとめ、私はコメントするのである。
山崎氏はたしか以下のように主張していた。
行動ファイナンスによれば個人はマーケットで合理的に行動しない。そのような個人が集まったマーケットは効率的な市場とはなり得ない、よって効率的市場仮説に基づくCAPM理論や、モダンポートフォリオ理論は誤りだ・・・・・。
ここでは以下の疑問がわきおこる
①行動ファイナンスは個人の行動の非合理性を証明したのか?
②「合成の誤謬」という古くからの概念があるように、個人が合理的に行動してもマーケット全体で見ると非合理なふるまいに陥ることはある。その逆で、個人は非合理的であってもマーケット全体としてみれば合理的になるということはないのか。
③効率的市場理論と完全競争市場を間違えて取り違えていないだろうか
④山崎氏の主張に賛同する経済学者や行動ファイナンスの学者はどれくらいいるのであろうか?そもそも、その主張自体学会ではコンセンサスが得られていないのではないか?
⑤すると山崎氏は当事楽天証券に所属していたわけで、いわゆる「ポジショントーク」を展開したのではないか?
①に関して
行動ファイナンスはそもそも経済学なのであろうか?あれは心理学なのではないだろうか?私の行動ファイナンスに関する理解は恐ろしく浅くとても論評できるレベルにないが、今後時間を見つけて、時間をかけ理解を深めて生きたい。
ただ入門書をチラ見したが、そこで紹介されていた行動ファイナンスの代表的業績である「プロスペクト理論」に取り立てて新しさは感じなかった。一言でいえば「効用曲線の形変えただけジャン!」である。
しかも経済学がその議論のあいまいさから、当の昔に置き去りにした基数的効用の概念に基づいているし・・・。
ふるい経済学の道具立てにちょっと手を加えて、株式市場の参加者の行動分析をしてみましたという感じである。したがって行動ファイナンスは応用経済学の一種であり、しかもその応用の仕方が上手だった、というのが現時点の感想である。
だからカーネマンにノーベル経済学賞やってもいいけれど、それはダントツにすごい業績に対して与えられたというわけではないのではないだろうか。そもそも心理学者に経済学賞やってもいいのか?という疑問は残るが・・・・。
だいたい行動ファイナンス自体が、アノマリーと呼ばれる一般的でない事象の発生原因を探るための研究からスタートしたのだし、そこから得られた結論が金融工学の前提を揺るがすようなものだとは到底思えないのだが。
ちなみに行動ファイナンスは、その理論の数学的な論理性がいまだに証明されていない理論も多くあるようで、とても系統だって展開されるレベルには至っていないようである。
今後時間が取れた、一生懸命勉強してみて、そのインパクトを自分で見定められるようになりたい。
②
単純なことです。非合理的にふるまう個人も含めてたくさんの人が参加することで市場は効率的になる。だから、市場に存在する非合理な個人の事例をいくら持ってこられても、それは市場の効率性を批判することにはならないのではないか?
③に関して、
経済学自体からも完全競争市場は数学的にもほぼ証明不可能な概念であるという批判は多く示されている。代表的なものは「ケネス・アロー」という、ものすごーく頭のいいアメリカ人が提示した「不可能性定理」というもので、彼はこれらの業績にでノーベル経済学賞をもらっている。
ただここで注意しなければいけないのは、これらの批判に共通しているのは「純粋な完全競争市場の存在」は証明不可能でも、それに近似するような市場が存在しうることは、いくらでも証明するこができるということである。
(ちなみにアローの定理のインプリケーションそれ自体は比較的簡単なものであるが、その証明プロセスは、おそろしーく難解かつ複雑で、おそらくミクロ経済学の教授でも理解している人は世界中でごく少数であり、理工学部の数学教授レベルでなんとか理解できて説明できるというシロモノらしい。その意味では、シロウトでもなんとか時間かけてくらいついていけば理解できるブラック=ショールズのオプション価格理論とは、難解さのモノが違うといえるだろう。まったく世の中には天才的に頭のいい人がいるものである。)
さらに効率的市場理論それ自体も、ウィーク派、セミストロング派、ストロング派と三段がまえである。このことは、効率的市場仮説の中でも、かならずしも完璧な理論的前提が共有されているわけではなく、その共通前提に基づいて理論が構築されているわけではないことを示している。
だから「完全に効率的な市場はない」といったところで、それは「完全な効率性をもつ市場」に似た市場が存在することを否定することにはならない。したがって、ランダムウォーク派にとっては、さほどイタイ批判でもなければ、理論の根本的な再構築を迫るほどのインパクトも持っていないのである。
④いままでここまで従来の効率的市場仮説の無効を主張した人の文章は見たことがない。私のリサーチ不足だと思いますが。
⑤ポジショントークの可能性大アリです。だって個別銘柄の売買する必要なくなっちゃうんですもの。それだけは証券会社にとっては禁句だよね。
あと日本の市場は効率的ではないと主張する人もいますが、わたしは効率的だと思っています。ストロング派とはいいませんが。アメリカでアンチ効率的市場仮説派も、似たような批判展開していると思います。
あと効率的市場理論は、株価が右肩あがりだったアメリカ生まれだから、ローカル限定だという人もいますが・・・・、まあ無視していい主張だと思ってます。経済学や数学の何たるか、理論とは何たるかをわきまえないふざけた主張だと思います。
以上私の行動ファイナンスに対する見識の浅さや、山崎氏が実際は何を取り上げているのかがわからない状況のもとで強引に書き綴ってみました。
またまとまった時間がとれれば、是非「行動ファイナンスは従来の金融工学を根本から崩すほどに「正しい」のか?」という点について勉強して生きたいと思います。
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