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2007年1月14日 (日)

早稲田ラグビー惜敗 現代ラグビーの対立軸が如実に表れた試合

 2007年1月の大学ラグビー 学生選手権決勝で、早稲田が関東学院に負けました。早稲田にとってこの敗戦は戦術やメンバー選考といったものだけがもたらしたものではありません。これは背後にある今年のチームの構造的な問題が表面化した結果にほかなりません。以下ではその問題点を、現代ラグビー、組織論、モチベーションといった視点から論じて見たいと思います。

1 現代ラグビー問題   :FW重視対BK重視ではなく、パワー重視か持久力重視か

 現代のラグビーに一番近いスポーツはなんでしょうか?一見するとサッカーから派生したといわれるスポーツなので、オフサイドなどのルールはサッカーに似ています。しかしサッカーとラグビーが決定的にちがうのはコンタクトが認められていない点です。そしてこのコンタクトが認められるという点では、アメフトに似ているともいえます。使っているボールも楕円ですしね。
 そしてラグビーというスポーツは、実はサッカーからアメフトに近づいているというのが大まかな流れなのです。言い換えればそれは持久力重視からパワー重視へとプレーが変わってきているということでもあります。この世界的な潮流を明確に体言したのが、ワラビーズを率いてオーストラリアに栄光時代をもたらしたエディージョーンズです。彼が当事導入したオフェンススタイルは徹底的なラック連取により、相手にボールの支配権を渡さずに、じりじりと、ゴールラインまでボールを前進させるというものです。観ていてツマらないことこの上ないスタイルですが、有効なスタイルには違いありませんでした。またエディは組織的ディフェンスという考え方を導入し、チーム全体というシステムで、ディフェンスラインの穴をふさぐということを実践し、完成度の高いラグビースタイルを作り上げました。

やがてエディジョーンズは、サントリーにアドバイザーとして請われたときに、これらのラグビースタイルをサントリーに持ち込みました。当事サントリーで選手としてのラグビー人生を終えようとしていた清宮前監督はエディジョーンズの影響を大いに受け、その最先端の手法を早稲田に持ち込み、低迷しているチームを劇的に再生させることに成功したのです。

 ここで重要なのは、ラックを連取するというオフェンススタイルでもシステムディフェンスでもありません。そのようなプレーが可能となるための条件です。言い換えるとこれらのプレーの前提となる「体作り」の問題なのです。実はこれはラグビーの「プロ化」という事態と密接にかかわっています。そしてエディジョーンズこそがラグビー界において、このプロ化のトレンドを最も先取り的に体現した人物だったのです。「プロ化」以前は80分走り続けるだけの持久力がもっとも重視されていました。しかしエディのスタイルが一定の成功を収め、そのことが証明したのは、コンタクト時に相手を圧倒できるパワーこそが、持久力よりも重要だということです。つまりはコンタクト時のダメージによる筋肉疲労は、走り回ることによる筋肉疲労よりもはるかに大きいものだということが、科学的トレーニング法がラグビーに持ち込まれることにより明らかになったのです。それ以降のプロラグビーは、コンタクトの局地戦でいかに相手を圧倒するかという競争に突入しました。

 この「効率的に筋疲労を与える」という考えは大学ラグビーにも実は10年以上も前から関東学院が導入していたスタイルです。これにより関東学院は10年連続決勝進出という安定した力を発揮することができました。この事実を明確に意識していたのは早稲田の前には関東学院だけだったと言ってもいいと思います。早稲田も清宮監督により、より洗練された方式でこのスタイルに追随しました。両校がこの「コンタクトによる筋疲労」に如何に重点を置いていたかは、関東学院のFWが試合開始直後から「アタック」と称してラックに体をぶちかまして突入していくプレーを頻繁に繰り返すことや、清宮監督時代の早稲田が理不尽と思えるほどにスクラム強化にこだわったことや、去年までの早稲田が試合終盤に怒涛のように得点を積み上げたことをみれば、わかると思います。接点での執拗なプレーは相手に筋疲労を与えて動けなくさせるための布石であり、怒涛のように積みあがった得点は相手が筋疲労で動けなくなりメンタル的にではなく、体力的に「キレ」てしまったことの結果なのです。ちなみに関東学院ラグビー部に格闘技中継好きの文化が醸成されているのも、選手が格闘技と現代ラグビーに共通するものを肌で感じ取っているからだと思います。わたしは去年の大学選手権の決勝でのハーフタイムでの春口監督の「FW前3人のファイトが足りない」というコメントや清宮監督が就任一年目の決勝を振りかえる中で発した「仲山選手にボールが渡ったときに「ついにきたな!」と思った」というコメントも、筋疲労をキーワードに考えるとすんなりと受け止められました。

 これらが意味するのは、もはやFW重視、BK重視というものではなく、FWもBK両方にパワーが要求されるということです。ありていに言えばFW、BK関係なくランニングよりもウエイトトレーニングの重要性が高まったということです。よくTVで砂村氏などが「最近のFWはBK並みの走力がありますからね」などと発言していますが、ちょっとズレていると思います。FWが走力をつけたのは間違いないのですが、それはFWがBK化しているのではなく、BKがウエイトトレーニングなどにより、コンタクトに強い身体を手に入れ、その結果両者の垣根が低くなったと言うことだと思います。BKがFW化したといった方がより正確に事態を把握できると思います。例えばトップリーグの上位チームの選手の体つきを見れば、FWもバックスもかなり似通っていることがお分かりだと思います。

またディフェンス面では、ソフトウエアによるプレー解析技術が進歩することにより、組織的ディフェンスがますます洗練され、BK展開で相手を揺さぶるだけでは、なかなかディフェンスラインの穴が見つけられにくくなりました。そこでディフェンスシステムに真正面から揺さぶりをかけるのではなく、力強いコンタクトにより、システムの一点に一定以上の負荷をかけ、アノマリーを発生させ、システムにほころびをもたらし、システムをダウンさせるという手法が有力になってきました。ここでも重要になるのは、コンタクト時のパワーです。ディフェンス側にとっても、システムをダウンさせないために、いかにアノマリーを発生させないか、つまりは接点で競り負けないかが中心課題になりました。

 これらこそが清宮前監督が、就任当初から早稲田ラグビー部に導入すべく腐心したことなのです。彼のスタイルは世界のプロ化したレベルを常に念頭においておくことから導き出されてきたものです。すなわち徹底して接点にこだわる意識の注入(それはコンタクトするときの姿勢から始まって、詳細を極めました。そのディテールへのこだわりは中竹監督のそれをしのいでいました)。練習を短時間化し、長時間練習による筋力低下を防止したこと(長時間練習は、休み時間も含めて、結果として大量の有酸素系のトレーニングを行なったことと同じ効果を持ち、選手の筋力を大いに低下させます)。S組の導入などによる、徹底的なウエイトトレーニングレベルの強化。最新のウエイト機器、練習設備、バックアップ体制の導入。これらの全てが、現代ラグビーの潮流の変化を前提にしたものでした。それにより早稲田に「接点革命」ともいうべきものがもたらされました。いろいろやりたいラグビーがあったとしても、そのもとにになる体作りが出来ていなければ絵に描いたモチに終る・・・。

 思うに今シーズンの中竹監督はこれとは大きくちがった方向性を志向したようです。彼の考えが昔の早稲田への郷愁から生まれたものなのか、パワーラグビー化してある意味単調になった現代ラグビーへのアンチテーゼから生まれたものなのかはわかりません。ただスイフトラグビーの中でも「フェイズを重ねずに少ない手数で得点する」という発想は可能性を感じさせるものです。現代ラグビーは相当な実力差がない限り、理詰めでトライをとるのがますます難しくなっているからです。このように得点されると相手チームは、いい試合をしていても点差が離れていくことになりますし、劣勢であっても一発逆転の可能性があります。決勝でも「個人技頼み」と評されたプレー(首藤のトライや五郎丸から菅野へつないだトライ)の背後にも、その組織的な成果がみてとれると思います。ただいかんせんスイフトを支えるはずのパワーが決定的に欠けていた・・・・。

 そして、ちょっと嫌味っぽいことを言えば、この発想はスイフトラグビーとは本質的に係りないスタイルではないかと思います。事実、中武監督は年末あたりから、スイフトという言葉を使わなくなり、代わりにセットアタックラグビーという言葉を多用するようになりました。セットアタック重視それ自体は結構なのですが、選手からすれば「スイフト」はどこいったの?ということになりかねません。言葉遣いからも今シーズンの監督のチーム運営における「迷走」が感じ取れてしまいます。

 上記のことは春に関東学院に負けた時点で多くのファンが心配した点でした。そして夏合宿の激しい追い込みや、シーズンインしても続く「走り込み」などを聞くにつけ、ファンの不安は深まっていたのです・・・。それでも去年の遺産もあるし大学選手権は勝てるはず、このコンタクトでは、トップリーグには歯が立たないが、来年軌道修正してくれれば、トップリーグを打倒できるチームを再び作れるはず・・・。私を含め多くのファンは不安を胸にしながらもそう思っていたはずです。悲しいことに私などは、先端的にトレーニング科学では、動物は冬に体重が増えやすいから、それに合わせて筋肉をつけてやると、ずっと1年中筋力を維持するよりも、瞬間的には筋肉がより肥大化しやすいという研究成果が発表されており、中武監督は選手の筋力のピークを年明けからトップリーグとの対戦時期に持っていくために、夏場はあえて筋肉をつけさせない練習に終始しているのではなどと夢想するような有様でした。

関東学院は素晴らしいチームですが、レベルとしては去年と同じレベルの素晴らしさだと思います。単純に早稲田のレベルが低下したということです。

中竹監督は来シーズンは、大幅な練習メニューの見直し、チーム作りの日程の前倒しを含めて、清宮監督のパワーラグビーを基本にすえた路線を受け継ぎつつも独自色を出すという方向へ軌道修正してくれるはずです。思えば清宮監督も太田尾組の頃は、一時期中武監督と似たようなチーム作りを下のではないかと思います。その意味では前監督にも路線の微妙な変更はありました。ただその際でも強力なコンタクトフィットネスをもつFWという発想だけは手放されませんでした。早稲田は今、日本一流のタレントを預かっているのだということを忘れずに、世界レベルで通用する選手を輩出する意気込みで、チーム作りにまい進してくださいね。

ちょっと長くなりすぎたので、組織論やモチベーション論はまたの機会に。

 

2 組織論的問題         :清算主義

構造改革。うまく言っている組織をなぜいじる必要があるのか?
3 モチベーション問題  :精神主義

過度の走りこみ。練習時間の長期化。ツラくなってるのに弱くなっている。

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